【パイワン族の故事】版画でえがかれる「土地と太陽の子」
こんにちは!
「台湾エスニック雑貨店」店長です。
今回は、地元の図書館でみつけた「土地和太陽的孩子(土地と太陽の子)」という絵本をご紹介します。この本は、パイワン族のアーティストによって描かれた創設神話で、天と地が生まれる前までさかのぼって始まります。エスニックな色使いと、木の質感が伝わってきそうな版画仕立ての表現に、思わず心が踊りました。
コンテンツ
パイワン族の創設神話
台湾原住民のルーツには未だ謎が多く、台湾でそれぞれの民族に分化したのか、それともそれぞれの民族が別々に渡来したのかということも、はっきりとわかっていません。ですが、それぞれの民族には、遠い昔から親から子へと受けつがれるいろいろな種類の「神話」があり、パイワン族の創設神話もそのひとつ。口承文芸ゆえに、それぞれの集落によって、多少違いがありそうですが、壺、百歩蛇、太陽は必ず登場する彼らの象徴です。
台湾の南部と東部に住むパイワン族ですが、その中で北部パイワン族の「拉瓦爾群(Raval)」、それ以外に居住するパイワン族「伏主勒群(Butsul)」とに分けられます。今回ご紹介する「土地と太陽の子」は、Ravalに昔むかしから伝わるお話です。
版画のデザインがステキな本の作者
店長がこの本に出あったのは、近所の図書館での事ですが、原住民らしい幾何学模様とカラフルなデザインに引きつけられました。
この本の作者は、伊誕・巴瓦瓦隆さん。「巴瓦瓦隆」という文字に見覚えがあったのですが、この方は以前紹介した「古琉坊」というお店の設計に携わった「撒古流・巴瓦瓦隆」のご兄弟だそうです。お父さんも伝統工芸に精通する方だそうなんで、まさにアーティストの血が流れるご一家ですね。
パイワン族の名前は、個人名+家名(屋号のようなもの)から成り立っています。伊誕・巴瓦瓦隆さんの場合は、「巴瓦瓦隆」が家名となり「伊誕」が個人名となります。「伊誕」は、古いパイワン語で勇者という意味を持つそうです。
物語のあらすじ
「土地と太陽の子」の大まかなあらすじは、こんな感じです。
むかしむかし、そのまたむかし、四方八方に何も存在していなかった頃、神様は天と地を生み出し、風や雷、雨、地震、山林や海をも創りました。やがて巨大な岩から、karuaとkariuという一男一女が生まれ、qatitan(アティタン)と呼ばれるパイワン族の始祖となります。
その頃の天は低く、太陽も明るくなく、人々の暮らしは不便でした。
ある日、satjairとsapiliという兄弟が狩りの途中、大姆姆山の山頂で煙が上がっているのを発見します。近づいてみると、それは壺から発生しており、兄弟はその壺を大事に自分たちの集落へ持ち帰ります。家の中で百歩蛇というヘビに見守られると、壺は穏やかに眠りにつきました。天窓からの日差しを浴びながら、壺は日を増すごとに大きくなっていきます。それと同時に天も高くなり、太陽も明るくなっていきました。
そんなある日、ポンッという音とともに壺が割れ、赤ちゃんが生まれました。この太陽と壺によって生まれた赤ちゃんは、Ljeveljeveljev(ラフラフラフ)という産声をあげたことからljeveljev(ラフラフ)と名づけられ、mamazangiljan(頭目)の始祖となりました。
巨大の岩石から誕生した一男一女の子孫は、オリジナルという意味を持つqatitan(アティタン)と呼ばれ、狩猟や漁猟、土地の開墾において、重要な役割を果たします。また、Mamazangiljan(頭目)の子孫は、人々の心の支えとなる役割を果たす存在です。土地の父母であるqatitanと、太陽に育まれたMamazangiljanの子孫は、どちらも心のよりどころとして、なくてはならない存在です。
おしまい
パイワン族の住む集落では、至るところで物語に登場してきた、太陽や蛇、壺などのアートに出会うことができます。
彼らとのかかわりを知ると、街歩きが一段と楽しくなりそうですね。